- 増えている子どもの食物アレルギー
- なぜアレルギー反応が起こるのか?
- 食物アレルギーの症状
- 子ども食物アレルギーの原因(卵、牛乳、木の実、小麦)
- 口腔アレルギー症候群(OAS)
- 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
- 「食物日記」をつけましょう
- 「経口免疫療法」は専門医と一緒に
- アレルギー・マーチについて
- 皮膚のケアの重要性
- よくある質問(Q&A)
増えている子どもの食物アレルギー
子どものよくあるアレルギー疾患には、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・花粉症、アレルギー性結膜炎などがあり、その中で食物アレルギーが増えています。
食物アレルギーは、食べた食物に対して体が過剰に反応し、皮膚、呼吸器、消化器など全身に症状を引き起こすことを指します。食後に皮膚に蕁麻疹や湿疹が現れたり、ゼーゼーと息が荒くなったり、顔色が悪くなったりすることで診断されます。
IgE抗体を測定する血液検査がありますが、結果が高くても問題なく食べられる場合や、逆に結果が低くてもアレルギー反応が出る場合があるため、検査結果だけでは診断できません。あくまで症状の診断を補助するものです。
もちろん離乳食を始める前に検査は必要ありません。
食物アレルギーで反応が出やすい食品には、卵、牛乳、小麦、大豆などがあります。これらを含めて、初めて与える食品は加熱・加工されたものを少量から始め、様子を見ながら徐々に量を増やしてください。何か異常が起きた場合にすぐに受診できるように、平日の日中に始めるのが望ましいです。
食物アレルギーの種類
食物アレルギーは、以下の5つのタイプに大別されます。
1. 乳児消化管アレルギー
新生児や乳児期に下痢、血便、嘔吐などの消化器症状が主に見られるタイプです。原因の多くは人工ミルクですが、最近になり卵黄の固ゆでも増加しています。また、生まれた当初人工ミルクを飲んでいた赤ちゃんが、完全母乳栄養に移行し久しぶりに人工ミルクを飲んだ時発症することがあります。アレルギー用ミルクに変更して症状が改善されるかを確認します。アレルギー用ミルクにもいくつか種類があるので、どのミルクが良いか相談してください。乳児消化管アレルギーは多くの場合、1歳から2歳までに自然に治ります。
2. 食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎型
乳児期にかゆみを伴う湿疹が顔から始まり全身に広がるというアトピー性皮膚炎の診断基準を満たす湿疹で、実は食物アレルギーが関与しているタイプの食物アレルギーです。主な原因食物は卵、牛乳、小麦、大豆です。適切なアトピー性皮膚炎の治療でも湿疹が改善しない場合、食物アレルギーが関与している可能性があります。乳児湿疹と診断されていて、なかなか改善しない場合に、何か原因があるかもしれません。
3. 即時型症状
特定の食品を摂取してから30分から2時間以内に、皮膚、呼吸器、消化器に症状が現れるタイプです。乳児期には卵、牛乳、小麦などが主な原因で、幼児期以降では魚卵、そば、ピーナッツ、甲殻類、果物などが原因となることが多いです。乳児期に発症するものは自然に治ることが多いですが、幼児期以降のものは治りにくいとされています。
4. 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
学童期から若年成人に多く見られ、特定の食品を摂取後2時間以内に運動することで症状が現れる特殊な食物アレルギーです。主な原因は小麦や甲殻類です。食品を摂取するだけ、または運動するだけでは症状は出ません。原因食物が特定できない場合には、専門病院で食物負荷試験と運動負荷試験を行うことがあります。
5. 口腔アレルギー症候群
生の野菜や果物を食べると、口や喉にイガイガ感が生じるタイプです。学童期以降に多く発症し、多くの患者は花粉症を持っています。生の原因食物で症状が出る場合でも、加熱したもの(ジャムや加熱加工品など)では症状が出ないことが多いです。
免疫システムの過敏反応によって生じるのがアレルギー
なぜアレルギーが生じるのでしょうか?
私たちの体は、ウイルスや細菌などの病原体を「自分自身」とは異なる「外部のもの」として認識し、これを排除することで健康を守る免疫システムを持っています。
しかし、この免疫システムが過剰に反応すると、外部からの刺激や摂取した食物を本来は無害であるにも関わらず、「アレルゲン」として認識し、攻撃してしまうことがあります。そのとき体の中では、IgE抗体(免疫グロブリンE)が生成され、体にさまざまな過剰な反応が引き起こされます。これが「アレルギー反応(過敏反応)」です。
アレルギー反応を引き起こす物質は「アレルゲン」と呼ばれ、食物、ダニ、カビ、花粉などさまざまなものがあります。これらのアレルギー反応によって引き起こされる代表的な疾患には、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症があります。これらの6つの疾患は、アレルギー疾患対策基本法に定められています。花粉症は、花粉をアレルゲンとしたアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎を指し、中には花粉の刺激で気管支喘息やアトピー性皮膚炎の症状が出る人もいます。
多くのアレルギー、特に食物アレルギーに関連する抗体は「IgE抗体」です。
アレルゲンとなる食物が体内に入ると、その食物に特異的に反応するIgE抗体が作られます。例えば、卵アレルギーの場合は卵のタンパク質に、小麦アレルギーの場合は小麦のタンパク質に反応するIgE抗体が作られます。
このIgE抗体はアレルギー反応を引き起こす細胞であるマスト細胞の表面に結合し、再びアレルゲンが侵入するのを待ちます。この状態を「感作(かんさ)」と呼び、アレルギー反応が起こる準備が整った状態です。その後、アレルゲンが体内に入りIgE抗体に結合すると、マスト細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出され、皮膚のかゆみ、咳、くしゃみなどのアレルギー症状が引き起こされます。食物アレルギーの症状は多くの場合、原因食物を摂取後30分以内、遅くとも2時間以内に発症します。
食中毒と食物アレルギーの違い
例えば、キノコやフグの毒を摂取した場合、様々な症状が現れますが、これは毒そのものが原因であり、免疫システムは関与していないため、食物アレルギーではありません。また、傷んだサバなどに含まれるヒスタミンを摂取すると、蕁麻疹などの症状が出ることがありますが、これはヒスタミン自体が引き起こす反応であり、免疫システムは関与していないため、これも食物アレルギーではありません。
さらに、牛乳を飲んで下痢を起こす人がいますが、これは乳糖不耐症といって乳糖を分解する酵素が不足している体質によるもので、アレルギーとは異なります。このように、特定の食品を分解する酵素が不足している体質によって引き起こされる不調を「食物不耐症(しょくもつふたいしょう)」と呼びます。
食物アレルギーの症状は、様々な身体の部位に影響があります
食物アレルギーは、皮膚、呼吸器、消化器などさまざまな部位に症状を引き起こします。その症状は非常に多岐にわたります。例えば、皮膚にはかゆみや赤み、蕁麻疹、湿疹が現れます。呼吸器では、声がかすれたり、息がしづらくなったり、咳が出ることがあります。消化器では、腹痛や吐き気、嘔吐、下痢が見られます。目は充血したり涙が出たりし、鼻はくしゃみや鼻水が、口では腫れやかゆみ、イガイガ感が生じることがあります。症状の程度は軽度から重度まで様々で、重篤な場合には「アナフィラキシーショック」と呼ばれる状態に陥ることがあります。
アナフィラキシーは、二つ以上の臓器にアレルギー反応が現れる状態で、特に血圧の低下や意識障害を伴う場合を「アナフィラキシーショック」と言います。この状態は命の危険があるため、迅速な対応と救急車の手配が必要です。
アナフィラキシーショックに対する効果的な治療法は、アドレナリンの筋肉注射です。医師からアドレナリン自己注射器(エピペンまるR )を処方されている場合は、症状が出たらすぐに使用することが重要です。過去にアナフィラキシーを経験したことがある人は、緊急時に備えて事前に医療機関でエピペンを処方してもらうと安心です。
子ども食物アレルギーの原因の多くは卵、牛乳、木の実、小麦
最近、木の実類に対するアレルギーが増加しています。クルミやカシューナッツなどの輸入量と消費量が増え、ナッツ類のスプレッドなどが手軽に購入できるようになった結果、子どもの木の実アレルギーも増加しています。木の実をそのまま食べると誤って気管に入る危険性があるため、1、2歳の子どもには避けた方が安全です。
魚卵類のアレルギーは1~2歳の子どもで4番目に多く、2001年に調査が開始されたときよりも増加しています。これは、外食などで生の食物を食べる機会が増えたことなど、生活様式の変化が関係していると考えられます。加熱調理や消化によってアレルゲン(たんぱく質)の構造が変化し、アレルギーの原因になりにくくなりますが、生の食物はアレルギーリスクが高くなります。特に乳幼児は消化管が未発達なため、消化不良の食べ物がアレルゲンとなる可能性が高いです。そのため、乳幼児には加熱調理した食べ物を与えることが基本的に推奨されます。
トマトやメロンを食べると口や唇がかゆくなる、口腔アレルギー症候群(OAS)
特定の食物を食べると、蕁麻疹や声のかすれ、くしゃみなどの様々な症状が現れるのが食物アレルギーですが、実は花粉症から食物アレルギーに進展することもあります。果物や野菜には花粉アレルゲンと似た構造の物質が含まれており、それがアレルギー反応を引き起こすのです。
例えば、シラカンバ花粉症の人は、リンゴやモモ、ピーナッツ、大豆などにアレルギー反応を起こすことがあり、カモガヤやブタクサ花粉症の人はメロン・スイカやトマトにアレルギーを起こす可能性があります。この現象は「口腔アレルギー症候群(OAS)」と呼ばれます。
子どもも3歳くらいから花粉症になる例が増えており、特定の果物や野菜を食べて口の中や唇がかゆくなったり、イガイガする場合はOASの可能性があります。また、果物や野菜が口の周りに触れると皮膚がかゆくなったり赤くなったりすることがありますが、きちんと食べると症状が出ないこともあります。IgE抗体が陽性の食物が付着すると、皮膚テストのように赤くなることがあり、これは感作を示しており、必ずしも食物アレルギーを意味するわけではありません。食べる前に口の周りにワセリンを塗って保護することも有効です。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーについて
「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」とは、特定の食物を摂取した後に運動することでアナフィラキシー反応が引き起こされる食物アレルギーです。原因食物を摂取してから2時間以内、遅くても4時間以内に運動をすると症状が現れることがあります。運動をしなければ特に症状が出ないため、本人や家族がアレルギーに気づかないことが多いので注意が必要です。
このアレルギーは特に中学生に多く見られ、次いで小学校高学年や高校生にも発症します。主な原因食物は小麦で、エビやカニなどの甲殻類も一般的です。具体的なメカニズムはまだ解明されていませんが、運動によって腸からのアレルゲン吸収が増加することが要因と考えられています。症状は多岐にわたり、血圧低下や意識障害などの重篤なアナフィラキシーショックに至ることもあるため、症状が現れた場合には救急車を呼ぶ必要があります。食物依存性運動誘発アナフィラキシーを知らない人も多く、運動が原因で症状が引き起こされていることに気づかないこともあります。運動後に体調不良を感じた場合は、2〜4時間以内に食べたものを記録しておくと良いでしょう。また、原因食物が特定されている場合、運動前にその食物を摂取しない、または摂取後2〜4時間は運動を避けることが推奨されます。さらに、睡眠不足や疲労、ストレス、解熱鎮痛薬の使用も症状を引き起こしやすくするため、注意が必要です。
運動以外の要因でも食物依存性運動誘発アナフィラキシーが発生することがあります。過去に経験した例ですが、小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーの人が、パスタと一緒にアルコールを摂取し、食後に入浴した際にアナフィラキシー症状が現れました。アルコールや入浴が運動と同様の引き金となってアレルギー反応を引き起こしたと考えられます。入浴だけでも症状が現れることがあるため、注意が必要です。
子どもに食物アレルギーの疑いがある場合は、「食物日記」をつけましょう
食べたあと皮膚に蕁麻疹・湿疹、かゆみ、ゼーゼー、顔色不良など、食物アレルギーを疑うような症状が出た場合は当院へご相談ください。
その時に「食物日記」を付けることが非常に役立ちます。保護者の方は、食べたものや発生した症状を詳細に記録しておいてください。例えば、食べ物が生だったか加熱されていたか、どのように調理されたか、どのくらいの量を摂取したか、どこでどのような環境で症状が現れたか、症状が出る前の体調はどうだったかなど、気づいたことを細かくメモしてください。
診断時には、問診の他に血液検査(特異的IgE抗体検査)や皮膚テスト(プリックテスト)も実施されます。血液検査では、特定のアレルゲンに対するIgE抗体の量を測定します。一方、皮膚テストではアレルゲンの液体を皮膚に塗布し、専用の針で軽く刺してアレルギー反応の有無を確認します。
これらのテストは補助的な手段であり、これだけで診断が完結するわけではありません。最も重要なのは、疑わしい食物を実際に食べて症状が出るかどうかを見ることです。診断が難しい場合は、医療機関で対象となる食物を少量ずつ、複数回にわたって摂取し、症状の有無を確認する「食物経口負荷試験」を行い、最終的に診断を下します。この試験は症状が出た場合にすぐに対応できるように、入院して行うこともあります。また、食物経口負荷試験は、耐性の有無や症状なく食べられる量を調べるためにも使用されます。
原因となる食物が特定された場合、その食物を無理に完全除去するのではなく、症状が出ない安全な量を見極めて、その範囲内で食べることができるようにすることが目標です。これらの治療方針は医師との十分な相談のもとに進めることが重要です。
「経口免疫療法」は専門医と一緒に行いましょう
「経口免疫療法」は、アレルギーを引き起こす食物を少量ずつ医師の管理下で継続的に摂取することで、体がその食物に慣れて(耐性獲得)最終的に食べられるようにする治療法です。このアプローチは、原因食物を完全に排除するのではなく、少しずつ摂取することでアレルギー反応を克服しようとするものです。まず、食物経口負荷試験を行い、どの程度の量で症状が出るかを確認した上で、専門医の指導のもとで段階的に摂取量を増やしていきます。お子さんが「経口免疫療法」の適用になるかどうか、必ず医師と相談してください。
この治療法では、治療中に強いアレルギー反応が出る可能性があるため、慎重な対応が必要です。現在、この治療法は臨床研究の段階にあり、すべての医療機関で受けられるわけではありません。『食物アレルギー診療ガイドライン2021』では、「一般診療としては推奨されない」、「食物アレルギーに詳しい専門医が臨床研究として倫理委員会の承認を得て、患者や保護者に十分な説明を行い、アレルギー症状が発生した場合に迅速に対応できる体制を整えた上で慎重に実施すべき」と記載されています。
食物アレルギーの予防は、生後最初の3日間が鍵となる!?
食物アレルギーを予防するためには、アレルゲンとなる食物を早期から少量ずつ摂取することが有効だとされています。従来は生後数か月から始めることが一般的でしたが、その時期には既にアレルギーを発症しているケースも見られます。そこで、私たちは従来よりも早い段階、すなわち生まれた直後から介入し、その効果を検証する臨床研究を行いました。
対象は家族歴にアレルギー素因のある新生児312人で、彼らを『母乳(+アミノ酸乳※1)』を飲むグループ151人と『母乳+人工ミルク』を飲むグループ151人に分け、2歳時点で牛乳アレルギーの発症状況を確認しました。両グループとも母乳を主体とし、『母乳(+アミノ酸乳)』グループは母乳が不足した場合にアミノ酸乳で補充し、生後4日目からは人工ミルクで補充しました。一方、『母乳+人工ミルク』グループは初日から少なくとも5mlの人工ミルクを与えました。アミノ酸乳はアレルギーを引き起こさないミルクです。
結果として、『母乳(+アミノ酸乳)』グループでは牛乳アレルギーを発症した子どもが1人だったのに対し、『母乳+人工ミルク』グループでは10人が発症しており、『母乳(+アミノ酸乳)』グループでの食物アレルギーの発症が抑えられていました※2。また、鶏卵や小麦アレルギー、その他の食物によるアナフィラキシーも『母乳(+アミノ酸乳)』グループで抑えられていました。
この研究により、生後3日間という非常に早い段階で異種タンパクである牛由来の人工ミルクの摂取を避けることで、食物アレルギーを予防できる可能性が示されました。
※1アミノ酸乳:アミノ酸を混合してミルクの組成に近づけたものでアレルギー反応をおこさないミルク。
※2 JAMA Pediatr. 173(12):1137-1145, 2019
子どものアレルギー症状が次々おこるアレルギー・マーチについて
アレルギー疾患には、食物アレルギー以外にもアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎など、様々な種類があります。小児期には、これらの症状が異なる年齢に次々と現れることが多く、これを「アレルギー・マーチ」と呼びます。
乳児期には食物アレルギーやアトピー性皮膚炎が見られ、2~3歳になると気管支喘息、3~4歳ではアレルギー性鼻炎が発症することが多いです。ただし、これには個人差があり、順番が異なる場合もあります。
乳児期に食物アレルギーが発症した場合、花粉やダニなどのアレルゲンを避けるような生活環境を整えることで、アレルギー・マーチの進行を防ぐか、症状を軽減する可能性があります。
子どものアレルギー対策に皮膚のケアは大切です!
一見すると関係がないように思える食物アレルギーとスキンケアですが、実際には密接な関係があります。通常、健康な皮膚は角質層に守られ、外部からの異物が侵入しにくい状態になっています。しかし、皮膚のバリア機能が低下すると、異物が皮膚を通じて体内に侵入しやすくなります。異物(アレルゲン)が体内に入ると、免疫細胞がIgE抗体を生成し、感作が成立します。このプロセスを「経皮感作」といいます。
例えば、家族が室内でピーナッツを食べると、家庭内のホコリからピーナッツのアレルゲンが検出されます。それが子どもの湿疹のある皮膚を通して体内に入り、経皮感作が成立することで、後にピーナッツを食べた際にアレルギー反応が起こることがあります。つまり、食べていなくても、ピーナッツのアレルゲンが皮膚から侵入することでピーナッツアレルギーが発症するのです。したがって、皮膚を健康な状態に保つことは、アレルギー予防において非常に重要です。
食物アレルギーを気にして食べ物には注意を払っていても、部屋の掃除が不十分であったり、子どもの皮膚が乾燥してかゆがっている場合には、アレルゲンの侵入という盲点があります。生活環境全般に注意を払い、アレルギー発症を防ぐ取り組みを心がけましょう。
正しいスキンケアの方法は?
スキンケアは食物アレルギーの予防にも効果があります。生後すぐに始めるのが理想です。皮膚を洗う際には、必ず石けんを使いましょう。湿疹のある皮膚には黄色ブドウ球菌などの細菌やアレルゲン、汗が付着しているため、お湯だけでは不十分です。赤ちゃん用の石けんをよく泡立て、手のひらでやさしく洗い、洗浄成分が残らないようにしっかりとすすぎます。洗った後は、肌の乾燥を防ぐためにワセリンなどの保湿剤をしっかりと塗ります。
もし湿疹などが見られる場合は、医師に相談しましょう。アレルギーを予防するためにも、目指すのは「つるつるの肌」です。
子どもの食物アレルギーによくある質問(Q&A)について
親にアレルギーがある場合、子どももアレルギーを発症しやすい?
親が花粉症や他のアレルギー疾患を持っていると、子どももアレルギーを引き起こしやすい体質を受け継ぐことが多いです。
しかし、アレルギーの発症には遺伝だけでなく、環境要因も影響します。そのため、アレルギー体質であっても必ずしもアレルギー疾患が発症するわけではありません。また、親が食物アレルギーであっても、子どもが必ず同じアレルギーを発症するわけではなく、どのアレルギー疾患を発症するかは個々の体質によります。
妊娠中はアレルゲンとなり得る食品の摂取を避けるべき?
妊娠中にアレルゲンとなる食物を摂取しても除去しても、食物アレルギーの発症率に違いがないことが明らかになっています。ただし、過度な摂取は避け、栄養バランスの取れた食事を維持することが大切です。
離乳食を始める際には、アレルギーを引き起こしやすい食品は控えるべき?
以前は、離乳食としてアレルギーを引き起こしやすい食べ物を避けるべきだと考えられていました。
しかし、最近の研究では、そうすることが食物アレルギーの予防にはならないことが分かってきました。それでも、1歳以上の子どもで木の実類や魚卵に対するアレルギーが増えているため、これらの食べ物を過剰に与えないようにすることが重要です。また、湿疹やアトピー性皮膚炎などの皮膚トラブルが改善しない乳児には、食物アレルギーの可能性があるため、お気軽に当院にご相談ください。
食物アレルギーの血液検査で陽性が出た食品は、全く与えない?
アレルギーが心配でIgE抗体の血液検査を受けた結果、陽性反応が出たため、その食物を完全に排除したところ、栄養障害を引き起こしたという事例が過去にはありました。現在では、血液検査でIgE抗体が陽性でも、実際にその食物を食べて症状が出ない限り、除去する必要はないと考えられています。食物アレルギーは、食べた時に症状が現れる場合にのみ該当します。ただし、これまでに食べたことがない食物でIgE抗体の値が非常に高い場合、その食物を摂取することで症状が出る可能性があるため、医師と相談して適切な対処法を決めることが重要です。
食物アレルギーって一生治らない?