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インフルエンザ感染症

感染症対策のポイント

1.感染症の予防方法

感染症の予防方法
  1. こまめな手洗いと消毒
  2. マスクの着用
  3. 休養・十分な食事摂取・水分補給
  4. 咳エチケット
  5. 適切な室内加湿と換気
  6. ワクチン接種

2.感染症の主な感染経路

  1. 飛沫感染とは:インフルエンザに感染した人の咳やくしゃみなどのしぶき(飛沫)に含まれるウイルスを吸い込んで感染すること。飛沫は2mくらい届きます。即ち感染している方から2メートル程度にいる方は感染の危険があります。
  2. 接触感染とは:ドアノブなどからウイルスが手に付着、手で口や鼻を触れることにより感染すること。

インフルエンザについて

1.原因ウイルス

インフルエンザウイルス A型 B型

2.流行時期

主に冬季、12月から流行がはじまりこどもたちの冬休み中に一時期収まりますが、3学期がスタートして1-2週間すると本格的に流行がはじまります。最近では、冬季以外にも発生することがあります。

3.感染経路

飛沫感染と接触感染

4.インフルエンザウイルスが増えやすい環境

温度が低く湿度も低い環境はインフルエンザウイルスの生存しやすい環境です。そのため冬に大流行します。Harper,G, は1961年に以下のような研究結果を発表しています。

インフルエンザウイルスの生存率

温度7-8℃の環境で湿度20-25%では6時間後の生存率は63%、湿度を49-51%にすると生存率は42%、湿度を81-82%では生存率35%に低下。
温度20.5-24℃の環境で湿度20-25%では6時間後の生存率は66%、湿度49-51% にすると生存率は3-5%に落ちました。
温度が32℃となると湿度が49-51%以上の環境下で6時間後の生存率はほぼ0%と報告されています(注1)。最近では夏にインフルエンザウイルスに罹患する方もおりますが、大流行に至らないのは、夏はインフルエンザウイルスの生存しにくい環境であるためです。
室温を20-25℃、湿度を50%くらいに室内環境を整えることも予防策の1つとなります。

(注1. Harper,G, J.: Airborne micro-organisms: survival tests with four viruses. J.Hyg.Camb., 59;479-486. 1961)

5.インフルエンザの潜伏期間と感染力

  1. 潜伏期間:インフルエンザウイルスに感染してから症状が現れるまでの期間(潜伏期間)は、個人差もありますが1-3日と考えられています。
  2. 感染力:インフルエンザに罹患したヒトからのインフルエンザAの排出は発症後1-2日が最も強く、発症後5日くらいまで継続します。5-10日後には呼吸器系での増殖は検出されていません(注1.)。インフルエンザBのウイルス排出は二峰性で発症前2日と1-2日後にピークに達します(注2)。インフルエンザに罹った人が他の人への感染力は発症前から発症後数日間続くことを意味しています。

(注1. Cowling BJ, Chan KH, Fang VJ, et al. Comparative epidemiology of pandemic and seasonal influenza A in households. N Engl J Med 2010; 362:2175.)
(注2. Ip DK, Lau LL, Chan KH, et al. The Dynamic Relationship Between Clinical Symptomatology and Viral Shedding in Naturally Acquired Seasonal and Pandemic Influenza Virus Infections. Clin Infect Dis 2016; 62:431.)

6.出席・出勤停止期間

出席・出勤停止期間発症日(発熱した日)を0日とし5日目まで、かつ解熱後2日間(乳幼児は3日間)の長い期間。

7.インフルエンザの症状(注1)

  1. 発熱:95% うち50%が39℃以上
  2. :77%
  3. はなみず:78%
  4. 頭痛:26%(3歳から13歳の中で)
  5. 筋肉痛:7%(3歳から13歳の中で)

多くの場合、①から⑤の症状で自身の免疫力で回復します。小児ではまれに異常行動を示すことがあります。そのため有熱期間は目を離さないようにしてください。
また、特に2歳以下の子供で28%が入院治療を必要としたと報告されています(注2)。
2015年から2020年の間にインフルエンザで入院した29,000人以上の小児を対象とした臨床研究では、7.6%に神経合併症がありました(注3)。
その内訳は以下のとおりです。

  • 熱性けいれん:小児の 5% (合併症の 53.7%)
  • 脳症:小児の 1.7% (合併症の 18.7%)
  • 無熱性けいれん:小児の 1.2% (合併症の 13.2%)
  • 脳炎、無菌性髄膜炎、脳膿瘍/細菌性髄膜炎、脳梗塞、ライ症候群:小児の ≤0.12% (合併症の ≤1.3%)

その他、中耳炎、肺炎を合併することがあります。

(注1. Silvennoinen H, Peltola V, Lehtinen P, et al. Clinical presentation of influenza in unselected children treated as outpatients. Pediatr Infect Dis J 2009; 28:372.)
(注2. Dawood FS, Chaves SS, Pérez A, et al. Complications and associated bacterial coinfections among children hospitalized with seasonal or pandemic influenza, United States, 2003-2010. J Infect Dis 2014; 209:686.)
(注3. Antoon JW, Hall M, Herndon A, et al. Prevalence, Risk Factors, and Outcomes of Influenza-Associated Neurologic Complications in Children. J Pediatr 2021; 239:32.)

8.受診の目安とインフルエンザウイルス迅速検査

受診の目安とインフルエンザウイルス迅速検査お子さんやご家族が発熱したら・・・・・。慌てずにまず、食事がとれているか、水分摂取ができているか、眠れているかどうか確認してください。いずれかが著しく落ちている場合は受診してください。また、いずれも保たれていれば、発熱してから12時間以上経過してから受診することをお勧めします。インフルエンザ迅速検査は鼻に細い綿棒を入れて行います。検査をするときに鼻粘膜のウイルス量が十分に増えていないと偽陰性の結果になってしまいます。発熱した初期にはウイルス量がまだ少ないため検査しても正確に診断できず翌日もう一度受診していただくこともあります。ただし、家族内でインフルエンザウイルスに濃厚接触しているケースでは、発熱して2-3時間でも迅速検査陽性になることもありますので、12時間待つことなく受診しても良いと思います。

9.インフルエンザ治療法

インフルエンザ治療法インフルエンザと診断されたら抗インフルエンザ薬の投与を受けることができます。抗インフルエンザ薬はインフルエンザウイルスを殺す作用はありません。体内でインフルエンザウイルスが増えることを抑制します。よって発症してから48時間以内に治療開始することが重要です。抗インフルエンザ薬には、内服薬(粉や錠剤・カプセル)や吸入薬があります。入院施設のある医療機関では注射薬で治療することもあります。患者さんの年齢や体重、過去の服薬歴などを考慮してどの薬を処方するか考えます。抗インフルエンザ薬の効果は発熱期間が1-2日程度短縮すると考えられています。

10.予防方法

  1. 感染症対策のポイントの項を参照してください。
  2. インフルエンザワクチンの接種をお勧めします。当院で2024年12月9日から12月28日の間に当院では84名の患者さんがインフルエンザと診断されました。そのうちワクチンを接種していた方は4名のみでした。ワクチンをしていても周囲にインフルエンザウイルスが蔓延してしまうと罹患してしまうこともありますが、当院での結果をみてもワクチン接種による予防効果は認められています。妊娠中の方でも注射型のインフルエンザワクチン接種は安全性が確認されています。ただし、妊娠中の鼻噴霧タイプのインフルエンザワクチン接種は安全性が確認されていないため、妊娠中や妊娠の可能性のある方への接種はできません。

インフルエンザ予防接種は
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