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不正出血

不正出血について

不正出血

月経以外で出血がある状態が不正出血です。特に、ホルモンバランスが乱れやすい思春期や更年期、閉経期などに多く見られます。出血の状態には個人差があり、下着に少量付着する程度から多量の場合、鮮血色、茶褐色など様々です。何らかの婦人科疾患が原因の場合がありますので不正出血が気になる方は早めに医療機関を受診してください。

不正出血の原因

ホルモンバランスによる影響

排卵期出血

排卵期には、月経以降増加の途をたどっていたエストロゲンの分泌量が若干減少するため、子宮内膜の一部が剥がれ落ちることがあります。この時に月経のような出血が見られます。特に、性成熟期の女性によく起こる不正出血です。排卵の数日前に出血が起こり、高温期には治まります。出血の他には下腹部痛やおりものが見られますが問題のない出血とされるため心配はありません。ただし、出血量が多く強い痛みが伴う場合には、子宮筋腫や腺筋症、子宮内膜ポリープなど器質的疾患が隠れている可能性があります。気になる不正出血がある方は、早めに受診してください。

無排卵性出血

ホルモンバランスが乱れることで起こる不正出血です。過度のストレスや緊張、環境の変化、加齢などが原因で、エストロゲンの分泌が障害され排卵できない状態となります。排卵が障害されると、子宮内膜が次第に分厚くなり維持できなくなって出血を起こします。無排卵性出血は、「月経期の出血日数が長くなる」「月経周期が短いまたは長い」などが見られます。

更年期の不正出血

閉経前後の5年間を合わせて10年間を更年期と言います。40歳前後から月経周期が徐々に短くなり、閉経が近くなると月経不順を経て稀発月経となり閉経を迎えることが多いです。更年期に見られる不正出血は月経不順によるものとわからないところがありますが、子宮頸がんや子宮体がんなどの腫瘍性出血の可能性もあります。このため、更年期あたりに不正出血を疑う場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めしております。また日頃から人間ドックや自治体の子宮検診を受診なさることもおすすめです。

膣炎などの炎症

女性の膣内は、膣分泌液が常時一定量分泌され弱い酸性に維持されることにより、病原菌の侵入から守られています。これを膣の自浄作用と言います。しかし、過度のストレスや疲労、緊張、性交渉などによって膣の自浄作用が低下すると、菌が侵入または繁殖して炎症を起こすことがあります。また、更年期以降は膣分泌液が減少するため萎縮性膣炎を起こしやすく不正出血が見られることがあります。

着床時や妊娠初期

妊娠着床時や妊娠初期には出血が起こることがあります。着床時期は排卵から約1週間から10日ごろ起こり、出血量は少なく薄ピンクや茶色のおりものの時もあります。妊娠初期には、切迫流産や絨毛膜下血腫などを起こしやすいため注意が必要です。

裂傷

皮膚疾患や感染症などが原因で陰部の粘膜が弱くなり、わずかな刺激で傷ができて出血が起こることがあります。性交渉や外傷などによってできることもあります。外陰部は神経がはりめぐらされており、わずかな傷でも違和感や痛みを感じるものです。内診台でしっかり診察をしないとわからないこともありますので、気になることがありましたらお越しください。

腫瘍

子宮頸管ポリープ・
子宮内膜ポリープ

子宮入り口にできるポリープが子宮頸管ポリープ、子宮内腔にできるポリープが子宮内膜ポリープです。いずれも良性の腫瘍であることがほとんどなのですが、ごくまれに悪性成分が見つかることがあるため切除し病理検査に出します。
子宮頚管ポリープは、不正出血による婦人科受診や、子宮がん健診で指摘されることが多くあります。子宮内膜ポリープは月経量の増加がほぼ発生し、不妊症の原因の一つでもあります。子宮頚管ポリープの切除は外来受診の際、比較的短時間で終了します。
子宮内膜ポリープの切除は、静脈麻酔下で子宮内膜掻爬の手技を行います。そのため少なくとも半日は必要となります。両腫瘍とも必ずしも切除しなくてはならないものではありません。症状や悪性のリスクなどを考慮し、治療方針を決定いたします。

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮の平滑筋細胞にできる良性腫瘍です。複数個できることが多く数や大きさは様々で、小さい筋腫を含めると30歳以上では約20-30%の女性が保持しているとされています。卵巣からの女性ホルモンの影響により増大し、閉経後は小さくなっていきます。筋腫の発症部位によって、外側から漿膜下筋腫、筋層内筋腫、粘膜下筋腫に区別されます。おもな症状は、月経量が多くなることと月経痛で、その他に月経以外の出血、腰痛、頻尿(トイレが近い)などがあります。症状はできる場所と関係があります。子宮の内側にできた筋腫は小さい場合も症状が強く、月経量が多くなりますが、子宮の外側にできた筋腫は大きくなった場合も症状が現れない傾向があります。そのため、治療が必要かはできた場所や症状によって異なってきます。妊娠しにくい(不妊)、流産しやすい(習慣流産)などの症状も現れることがあります。子宮筋腫が分かった場合は早めに医療機関受診し治療方針を立てることをお勧めします。

子宮腺筋症

子宮頚部にできる悪性腫瘍です。ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染すると発症します。子宮頸がんの症状として不正出血が起こることがあります。性交渉の経験がある女性の約9割はHPVに一度は感染するとされています。そのほとんどは自然にウイルスが排除されますが、稀に子宮頸がんを発症することがあります。このため、子宮頸がん検診を定期的に受けることは非常に大切です。

子宮頸がん

子宮頸がん子宮頚部にできる悪性腫瘍です。子宮がんの約70%が子宮頸がんで、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因であることがわかっています。30代後半がピークで、国内では毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約3000人が死亡しております。性交渉の経験がある女性は一生に一度はHPVに感染するとされています。約90%は自然にウイルスが排除されますが、残り10%の人ではHPV感染が長期間持続します。そのうち自然治癒しない一部の方は異形成と呼ばれる前がん病変を経て、数年以上をかけて子宮頸がんに進行します。このため、子宮頸がん検診を定期的に受けることも大切です。また、性交渉経験前の女性においてはHPVワクチンによりHPVの感染を予防することは非常に有意義です。

現行のHPVワクチンにより子宮頸がんの60~70%を予防できると考えられており、WHOはその有効性と安全性を確認し、性交渉を経験する前の10歳代前半に接種をすることが推奨されています。欧米先進国や日本においても、ワクチン接種によりHPV感染率や前がん病変の頻度が接種をしていない人に比べて減少することが明らかになっています。日本では2009年12月にHPVワクチンは承認され、2013年4月より定期接種となっていますが、接種後に多様な症状が生じたとする報告により、2013年6月より自治体による積極的勧奨は差し控えられています。このような多様な症状の原因がワクチンであるという科学的な証拠は示されておりません。厚生労働省専門部会でも因果関係は否定されています。皆様が安心してHPVワクチンを受けられるように、体制の整備や正しい情報の提供に本学会も努めています。

子宮頸がんワクチン
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子宮体がん

子宮体がん多くの子宮体がんの発生には、エストロゲンが深く関わっています。エストロゲンの値が高い方では子宮内膜増殖症という前段階を経て子宮体がん(子宮内膜がん)が発生することが知られています。出産したことがない、肥満、無排卵性月経が多い、ホルモン療法でエストロゲンの単剤療法を受けている方などがこれにあたります。一方、エストロゲンとは関連なくがん関連遺伝子の異常に伴って発生するものは比較的高齢者に多くみられます。高血圧や糖尿病と診断されている方、近親者に乳がん・大腸がんを患った方がいる場合なども危険因子として知られています。
一番多い自覚症状は不正出血で、閉経後あるいは更年期での不正出血がある時には特に注意が必要です。閉経前であっても、不正出血がある方は、子宮体がんも疑われるため、早めに医療機関を受診してください。

検査

内診

視診で外陰部に異常がないか、双手診で子宮や卵巣が腫れていないか、骨盤腔に痛みがないかなど確認します。

子宮がん検査

子宮頸がん、子宮体がんの有無を検査します。これらは悪性腫瘍で、命の危険が伴う疾患のため、気になる不正出血がある場合は早めに検査を受けてください。

超音波検査

不正出血の原因が、子宮や卵巣の異常によるものかを確認します。

おりもの検査

内診台にて膣鏡を用いておりものを採取し、細菌感染の有無を検査します。

性感染症検査

不正出血の原因がクラミジアや淋菌など性感染症によるものかを検査します。

妊娠反応検査

着床時や妊娠初期に不正出血を起こすことがあります。妊娠の可能性がある方は、性行為から2週間以上経過すれば尿検査を行って妊娠の判定ができますが、より確実なのは3週間後以降になります。妊娠による不正出血かを判断できます。

血液検査

女性ホルモンのエストロゲンや黄体ホルモン、卵胞刺激ホルモンなどの分泌量を調べます。

不正出血の治療

ホルモンバランスが原因

多くのケースは経過観察で自然に治ります。ただし、出血量が多いまたは出血期間が長い場合は、ホルモン治療を行います。

炎症(膣炎や性感染症)が原因

原因菌にあわせた抗生剤もしくは外用薬(軟膏)を処方します。

妊娠初期

経過観察で自然に治まることも多いのですが、流産に気を付けて慎重に見診てまいります。

裂傷

軽度の場合は自然に治まりますが、外用薬(軟膏)の塗布や縫合処置を行うことがあります。