月経前症候群(PMS)・
不快気分障害(PMDD)
「月経前3日から10日の間持続する精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消失するもの」(日本産科婦人科学会)と定義されます。月経が始まる前に様々な心身の不調が現れます。思春期以降の女性から幅広い年代の女性に発症が見られます。症状は軽度から重度まで個人差が大きく、酷い場合には日常生活に支障を及ぼす程悩んでいる方も多くいらっしゃいます。特に、最近では感情のコントロールが困難になる、抑うつ傾向が強い場合は、月経前不快気分障害(PMDD)と分類され「抑うつ症状群」の一つと捉えられるようになっています。なおPMDDは月経がある女性の2-6%が該当するとされ、これは「重症のPMS」とみなされていた人たちの割合とほぼ一致しています。PMS・PMDDいずれも、月経時によく起こる不調として放置してしまうと、不快症状がストレスとなりさらに悪化することがあるため、気になる症状がある方は早めに医療機関を受診されることをお勧めしております。
PMS・PMDDの原因
原因は明確にわかっていませんが、女性ホルモンの変動が関係していると考えられています。月経周期がある程度整っている女性の場合、排卵から月経までの期間(黄体期)にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌されます。この黄体期の後半に卵胞ホルモンと黄体ホルモンが急激に低下し、脳内のホルモン(セロトニン)や神経伝達物質(GABA)の異常を引き起こすことが、PMSの原因と考えられています。しかし、脳内のホルモンや神経伝達物質はストレスなどから影響を受けるため、PMSは女性ホルモンの低下だけが原因とは言えず、多くの要因から起こるといわれています。出産後の女性にも似た症状がおこることがあります。
PMS・PMDDの症状
生理痛と言われる下腹部痛や腰痛などの身体的症状のほか、イライラ感や不安感、気分の落ち込みなど精神的症状などが、月経開始前の前週頃から現れます。月経が開始すると上記の症状が落ち着いてきます。PMSの症状として、代表的なものを以下に挙げます。軽度から重度まで症状は200種類以上とされ、ご自身の症状がPMSやPMDDに当てはまるかどうか不明な方は、一度当院までご相談ください。
身体症状
- 下腹部痛
- 下腹部の張り
- 腰痛
- むくみ
- 乳房の痛み
- 乳房の張り
- 関節痛
- 肌荒れ
- 体重増加
- 頭痛
- 疲労感
- 不眠
- 睡眠過剰
- 過食または食べられない
など
自律神経失調症状
- めまい
- 動悸
- 吐き気
など
精神症状
- イライラ感が強くなる
- イライラしやすい
- 攻撃的になる
- 人に当たってしまう
- 怒りっぽくなる
- 気分が落ち込む
- 気持ちが不安定になる
- 抑うつ症状がある
- 不安感
- 絶望感
- 緊張感
- 判断力が低下する
- 人に会いたくなくなる
- 学校や仕事に行きたくない
- 外出したくない
- やる気や気力が低下する
- 集中力低下
- 全てが思い通りに行かないと悲観する
など
重度の場合は感情コントロールがうまくできず仕事や人間関係でトラブルが多くなるなど、社会生活に支障を及ぼすことがあります。症状の強さによってお悩みの場合は、早めに当院までご相談ください。
検査・診断
月経前からの症状や月経周期、妊娠歴、出産歴、ライフスタイルなどについて、問診を丁寧に行います。
精神的(情緒的)症状
- イライラ
- 不安感
- 抑うつ症状
- 怒りっぽい
- 混乱
- 社会からの閉鎖感
- 引きこもり
身体的症状
- 下腹部の張り感
- 不快感
- 乳房の痛み
- 乳房の張り感
- 頭痛
- 手足のむくみ
など
検査について
必要に応じて、内診、超音波検査、血液検査等を実施します。
治療方法
生活習慣の改善
適切な食事、運動、睡眠の確保など、健康的なライフスタイルの維持が重要です。
ストレスを軽減するためにリラクゼーションやストレスマネジメント技法も役立ちます。
食事の見直し
食事による栄養バランスの改善や特定の栄養素(ビタミンB6、マグネシウム、カルシウムなど)の摂取増加が、症状緩和に寄与することがあります。
薬物療法
低用量ピルは排卵を抑制し、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の多量分泌の機会がなくなるので、PMS・PMDDの症状が楽になる方が多いです。しかし、ピルで嘔気が出る方や挙児希望がある方などは漢方薬が効果的です。低用量ピルと漢方薬を合わせて使用する方も大勢います。それでも精神症状が強い場合は、抗うつ薬、抗不安薬などが効果的とされていますが、心療内科や精神科の受診を勧めることもあります。